怒濤のミシュランガイド東京2010記者会見&出版記念パーティのTwitter中継が終了して1週間。実況中継の経験はほとんどなかったので、当日はずいぶんと苦労しましたが、終わってみると、とても楽しい体験になりました。一緒に取材した9人のブロガー記者の方々も、みなさんとても楽しまれていたようで、この企画を実現されたミシュランガイド関係者の方々には、とても感謝しています。いやー、楽しかった!(パーティでふんだんにシャンパンが振る舞われたからでもありますがw)
Twitterとブログの連携の可能性を試すためTwitterレポーターに
ミシュランガイド東京2010の記者会見&出版記念パーティをレポートする「ブロガー記者」と「Twitterレポーター」を、ミシュランガイドが募集したのは、もう数ヶ月前のこと。「ミシュランガイド」と言えば、東京と本国フランスが三ツ星レストランの数で、つばぜり合いをしており、その2010年版の発表となれば、非常に興味深い発表になるだろうな、と思い、気づくと募集フォームを開いていました(今までブロガー向け記者発表などに申し込んだことはありませんでした)。
では、なぜ「Twitterレポーター」に申し込んだのか。これは、ブロガーの方々をお招きして後日ブログに書いていただく、という従来のスタイルとは異なり、Twitterに求められている「実況」というリアルタイム性が、実際にインターネットでの情報の伝播に、どのようなインパクトがあるのか、そして、情報を蓄積して後日、参照できる「ブログ」との組み合わせを、どのようにすれば最適化できるか、ということに、高い関心があったためです。
2つのTwitterアカウントを同時更新することに!
Twitterの実況中継で最も苦労したのは、なんといっても2つのTwitterアカウント(ミシュランガイド公式アカウントである @MICHELIN_Guide と私個人のアカウントである @nseki )を使って中継したことでしょう。ミシュランガイド公式アカウントは、記者会見および出版記念パーティの間だけ、私が「ゲスト」として中継することになっていたのですが、一方で事前に「当日は @nseki がTwitter中継します」と両方のアカウントで告知していたこともあったので、2つのアカウントの役割を次のように決めました。
- ミシュランガイド公式アカウントは、公式アカウントらしいテキスト主体の実況中継
- 私の個人アカウントは、私個人のテイストが感じられる写真中心のフォトレポート
これによって、時間とともに急速にアクセスされなくなる一過性のコンテンツはTwitter、後からも価値が出るようなコンテンツはブログ、というコンテンツごとの住み分けを実現しようとしました。なおライブ感を出すために、ブログのコンテンツについても、ブログ(TypePad)のTwitter連携機能を利用して、タイトルをTwitterにフィードするように設定しました。
しかし、この決断が、当日の実況中継を、本当に過酷なものにしてしまいました。ふつうに考えてみたら、リアルタイムに2アカウントで同時更新なんて、できるわけがないですよね(笑)。
実況中継を前提としていない記者会見というシステム
「でも、やると決めたからには、できる限りのことをしよう」–。ということで、ベストの状況で実況中継を実現しようと、ミシュランガイドの広報を担当される方々に全面的に協力していただきました。というのも、多くの記者会見は基本的に「生中継」を前提としていないからです(政府の発表や芸能人の記者会見など、生放送になれた方々の記者会見は特別です)。
まず不可欠なのがオンライン環境。事前に会場である東京都庁45Fの状況を調べてみていただき、携帯電話の主要3キャリアとイーモバイルでの接続を確認しました。
次に確認したのが机の存在です。記者会見によって「机+イス(いわゆるスクール形式)」「イスだけ(いわゆるシアター形式)」の場合があります。もしシアター形式の場合、パソコンを使っての実況中継が難しくなるため(パソコンや当日の配布資料のとりまわしが不自由になる)、ここは事前にかなり強調させていただいたのを覚えています。
不安は的中し、会場のレイアウトはシアター形式。多くの報道陣を集めようとすると、より多くのイスが設置できるシアター形式になるのは分かるのですが、Twitter実況中継には致命的です。結局、200席以上のイスのうち、たった1席だけ小テーブル付きイスを用意していただくことになりました(飛行機のテーブルみたいに横から出てくる小さいテーブル)。
ここで私は一つ失敗をしでかします。「実況中継なのだから、さすがに電源については聞くまでもないだろう」と思ってしまったことです。しかし実況中継を前提としない記者会見のこと。こちらは事前準備がなかったために、見事に用意されていませんでした。それでも、直前まで特別扱いで電源をとらせていただき、記者会見中はバッテリーの残量を気にせず中継することができました。
ノートPC、カメラ付きケータイ、iPhoneを駆使!
さて、これだけサポートしてもらったら、恥ずかしい実況中継はできません。元プロの意地もあり、当日は(自分にしては)念には念を入れた装備で臨みました。
まず記者会見。今回はミシュランガイド総責任者ジャン=リュック・ナレが、三ツ星レストランを口頭で発表するまで、広報の方々も結果を知らないという徹底した秘密主義でしたので、会見で発表された内容をいち早くTwitterで多くの方に知っていただくのがTwitter中継の要と考え、聞いた内容を定期的にまとめては、@MICHELIN_Guideアカウントを更新しました。
一方、それだけでは会場の「臨場感」が伝わらないので、内容をまとめている合間合間に、2台の携帯電話で会場の写真を撮り、ブログ投稿を経由して@nsekiのアカウントも更新していました。ノートPCで中継しながら、右手もしくは左手で携帯の文字入力をしていたので、結果的に情報量が少なくなってしまったなぁ、というのが終わってからの反省ですね…(次回があるのか分かりませんが反省ポイントです!)。
そして出版記念パーティ。イスと机は撤去されてしまったので、全員が立つ、もしくはしゃがんでの取材になりますが、私はなんていっても唯一のTwitterレポーター。のほほんと構えている訳にはいきません。
そこで比較的高速にタイプできるiPhoneを左手に持ち、こちらは公式アカウント@MICHELIN_Guideで実況中継を続けます。一方、右手にはauケータイ(W61CA)をカメラモードでスタンバイし、フォトレポートを続けました。実況中継の情報量が減ることもあるので、実況の合間に@nsekiのフォトレポートへのつぶやきをRT(リツイート)することにしました。
でも当初こそ、スピーカーの方々が壇上に順番にあがっていたので、それなりに実況もできましたが、その後は三ツ星シェフの囲み取材も二手に分かれ、さらに会場には二つ星や一つ星のシェフや関係者が、会場全体に散らばっていて、「2丁拳銃体制」もあまりうまくいきませんでした。最後は、会場で振る舞われていたシャンパンを飲み始めてしまい、Twitter実況中継はダラダラとした終わり方になってしまいました。
どんなに「ダラダラ」になったかはミシュランガイド東京2010 出版記念レポーターのブログを追っていただければ分かるかもしれません ;-)
それでも、Twitterレポーターとブロガー記者は(他の出席者の方々と同様に)出版記念パーティをとても楽しんだと思います。
記者会見形式ならではの制限事項も
Twitterレポーターおよびブログ記者は新しい意欲的な試みではあるものの、ミシュランガイド東京2010記者会見の参加者の9割以上は報道を生業とするマスコミの方々。当然、マスコミならではのルールも存在します。一つは「動画の撮影、公開は可能な限り避ける」ということ。これは、動画を「放送」するテレビ局に対する配慮です。「Twitterレポーターやブロガー記者を招聘しておきながら制限なんてけしからん」という意見もあるかもしれませんが、記者会見の主たる目的は「いかに多くの方に、ミシュランガイドを認知してもらう」ということですから、動画のインターネット中継でテレビ放送がなくなってしまうのは本末転倒でしょう(少なくとも現時点では)。
もう一つの制限事項は、「星付きレストランを、リスト形式で公開しないこと」。これはミシュランガイド側の「ミシュランガイドで取り上げられたお店がなぜ星を得たのかという解説もちゃんとミシュランガイドで読んでほしい」という意向によります。もちろんこれは、書籍の売上を最大化したいというビジネス上の理由もあると思いますが、リストだけが一人歩きしてほしくない、という編集部の強いこだわりも、大きな理由だと思います。
リアルタイム性がウリのTwitter中継は、ぶっつけ本番生放送みたいなもの
Twitterによる生中継が終わり、改善ポイントはあるものの、まずまずの結果で終わったと思ったミシュランガイド東京2010 Twitter実況レポートですが、その翌日にちょっとしたアクシデントを起こしてしまいます。公式アカウント@MICHELIN_Guideで、前日のTwitter実況中継の「ミス」を一つ一つ丁寧に「訂正」していったのです。
私も後から「ミスした!」と悔いた実況つぶやきも少なからずあったのですが、すでにそのころにはウェブサイトなどに正確な情報が出ていたので、まぁ仕方がないな、と思っていました。ブログに正確な情報(レストランの一覧など)を掲載する手もあるのですが、これは今回の「禁じ手」となっていたので、はなから諦めていました。
一方、実況中継の最中は公式アカウントでログインしていたので、ミスしたつぶやきに対するツッコミのリプライも少なからず存在していることを知っていましたし、「星付きレストラン名のつぶやきがあるかと思ったら、一覧のPDFへのリンクしかなくてガッカリ」といった内容のつぶやきも届いていました。
ですので、こういった方のリプライに対して、訂正情報を提供するのは、広報活動としては至極まっとうで、とても誠実な対応であると思います。実際、リアクションは少なかったですが、訂正そのものについては評価する向きはあったようです。
ただし実際には、公式アカウントの使い方とあいまって、まったく違う方向からミシュランガイド公式アカウントの対応が、批判を浴びてしまいました。
同じアカウントの過去のつぶやきを訂正するだけなら、ここまで騒ぎは大きくならなかったと思います。ただ多くのTwitterユーザー(特に@MICHELIN_Guideと@nsekiをフォローしているユーザー)は、訂正が丁寧で漏れがなさすぎるのを見て、重箱の隅をつついて私のミスを責めているように見えたのでしょう。「私に敬意を払っていない」「実況中継ならではよさがわかっていない」という声が出始めました(詳しくは#MiGuideTokyoタグ検索結果を見ていただき、一人一人の感想をぜひ公開していただきたいです)。
私自身も、最初のいくつかの訂正を見ているうちは、「私に気を使って訂正してくれているな」と思ったのですが、さすがに隅から隅まで間違いを発見されて訂正されると、「ミスした!」という悔いを持っていたこともあり、ひどく責められている気分になったことも事実です(実際そういう内容のつぶやきをして、騒ぎを大きくした片棒を担ってしまいました。申し訳ない…)。
ソーシャルメディアはマスメディア以上に特性を理解して利用する
マスコミや一般報道、広報などは、明に暗に「無謬性(間違いがないこと)」を求められます。また後からリファレンスをとられてしまうので、事実誤認があった場合には、訂正を出すか出さないかだけで、大きな問題(争い)になることさえあります。ですので、Twitter中継の中でのミスは、インターネットで公開されている以上、修正するか訂正するのが当然、という意識を、ミシュラン広報の方が持つのは、ある意味、誠実な対応だったはずです。
ただ次の二つの原因により、誠実と思われた対応が、逆にTwitterユーザーの怒りを生む結果になったと思います。
- 同じアカウントを、異なる人が利用した。一方が言った内容を、もう一方が訂正した
- Twitterはマスコミではなく、「笑って流すミス」が存在する、一般ユーザーのコミュニケーションの場だった
今回ミシュラン広報は、ふつうであれば削除してしまったであろう、批判を受けたつぶやきをそのままインターネット上に残しています。これは、きっと今回の騒動から目をそらさず、むしろ学んでいこうという姿勢を示しているのではないかと思います。
今後のミシュランガイド公式アカウントの動きに注目です!
(注)今回の一連のイベントの参加は、関信浩個人の判断による応募により実現したもので、日本ミシュランタイヤとシックス・アパートの間に、報酬を伴う関係は存在していません。
最近のコメント